ベトナムと歯医者 4

乗船二日目の夜、私の奥歯に詰めていた銀歯が抜けた。急なことだった。

これまでも二回ほど取れては付け直しにいっているが今抜けなくてもいいじゃないかというタイミングで抜けてしまった。まあ抜けてしまったのなら仕方ないかとクルー用の医務室で診てもらうことにした。医務室の部屋に入るとそこにはスペイン系のドクターがいた。一応診てもらい診断してもらったが当然ながらここで治療できないといわれた。外国で歯の治療をしてもらうことにとても不安があったが仕方ない。後残りの83日間そのままにしておくことはできないし一刻も早く治したかった。

次の寄港地であるベトナムかその次の寄港地であるシンガポールかを選べといわれた。正直シンガポールが安心できると思ったが治療費が高く請求されるのでベトナムの歯医者で診てもらうことになった。この船で初の寄港地なのになぜ歯医者にいかなければいけないのか。

 

ベトナム

 

ベトナムの港、ダナンに着いた。

太極拳と鍼灸マッサージ室は寄港地についた日はお休みになるのでその日はぐっすり眠れた。

さて横浜港を出発してから一週間ぶりの地上に降り立った。

クルーの自由時間はお客さんの降りた後からになるので周りは結構静かである。

まずは歯医者に行くのだったが私の他に若いお客さんが1名と通訳と手続きの関係でインドネシア人クルーを一人同伴していくことになった。若いお客さんB子さんは私よりも重症そうで痛そうであった。不安そうな顔をしていたがその気持ちはものすごく分かる。私も不安だった。タクシーに乗って町の歯医者についた。もう見るからに大丈夫なのだろうか不安になる外観だったが以外にもお客さんが結構いて混み合っていた。

クルーが受付に説明してくれたお陰でそこで診てもらうことになった。

治療室は6台くらいの椅子が置いてありドア全開で外が見える開放的な感じだった。

問題は衛生面だが安心して水道水が飲める国日本に生まれ育ってきたがここは外国、口に入れる器具も消毒してあって安心かは分からない。もう既にハエが何十匹か飛んでいるのが見えるが、私は何を言っているのか理解できないベトナム語で一生懸命話しかけてくれている先生の意思で口を開いて治療してもらうことになった。取れた銀歯を先生に渡したがこれでは駄目だといわれてそこで新たなものをつけて貰うことになった。一瞬えっってなったが治療は終わった。これで本当に大丈夫なのかと不安はよぎったが、今現在にいたるまでその詰め物は取れていない。本当に腕がいい歯医者さんだったのだと思う。感謝。