次の日スペインに到着した。忘れもしないスペインだ。
私はここで一人迷子になった。危うく船に乗れず言葉も分からない国で生活しなければならないところだった。
なぜそうなってしまったかは、船のクルーとサクラダファミリアミリアにいったところから始まる。
前にも書いたが鍼灸師の帰船リミットは他のクルーよりも長い。
たまたま一緒にサクラダファミリアを観にいったクルーは、観てすぐに帰らなければいけないほど帰船リミットが短かった。時間があったのでもう少しのんびり観てから帰ろうと思った。
ここまで港から歩いて30分徒歩で行ったのだが、帰ったクルーを頼りにして行ったので道が分からなくなってしまった。
うろうろしていれば帰れるだろうと思っていたが甘かった。どの道も似たような感じで、どこから来たのかどこへ向かっているのか完全に方向感覚を失ってしまった。何度かサクラダファミリア前に戻ったがとにかく進むことにした。
地球は丸い、だから歩いていけば目的地に着くと信じて。
ここでこうして書いているということは無事に船に辿り着いたわけだが、迷子になってから一人でおよそ6時間歩いた。
港を目指すが海すら見えない場所まで来てしまった。
前方から日本人観光客らしい人が歩いていたので天の救いだと思い道を尋ねた。
私は最初船のお客さんだと思って話しかけたが、昨日バルセロナに観光に来たばかりの人だった。迷子になってしまったと言ったらホテルから持ってきていた地図を私にくれた。
本当にありがたい。心細くて泣きそうだったが堪えた。
地図を見たら港は今歩いて来た方向から反対方向にあった。
帰船リミットまで後1時間。私は観光客の人にお礼をいって別れた。
心を落ち着かせるため途中チェロスを買って食べながら港を目指した。
この時私はもう半分諦めてスペインでどうやって生活していこうかというところまで考えていた。
ようやく港が見えて橋の向こう側に泊まっている船が見えた。
帰船リミット10分前のことだった。歩き回ってくたくただったがとにかく今までないくらい必至に走った。
時間に間に合わなければパスポートもない状態で取り残されることになる。乗り遅れた人がいても船は時間通りにでなければ港へお金を支払う必要になるから待っていられない。
走って、走って、走った。
ようやく辿り着き手続きを済ませて時間を確認したら帰船リミットの3分前だった。ぞーっとした。美容師のYちゃんにとても心配をかけてしまったみたいだが、私が無事に戻れたと分かり抱きしめて喜んでくれた。よかった、とてもよかった。
次の日もマラガというまた別のスペインの港に奇港したが、昨日のこともあり遠出せず港付近でのんびり過ごした。
あまりにも必死だったので写真を撮る余裕がありませんでした。
世界が落ち着いたらサクラダファミリアを観にまた生きたい。