船の中でのパーティー 21

 

寄港地ラッシュの日々が終わり船の中も落ち着いた日常に戻った。

船で働いているクルーにはインドネシア人、日本人、ウクライナ人が主にいる。

船を降りるまでは基本クルーにはお休みはないが、月に一度クルーのためのパーティーがスタッフ専用の場所で行われる。

時間は二時間くらいだが音楽を流しサルサを踊ったり、飲んだり、食べたり、ビンゴもした。

私はクラブとかには行ったことないが、おそらくクラブで踊りに行くとあの独特な雰囲気を味わえるんだろうなあと思う。

日本人クルーよりもインドネシアクルーが多かったので異国感満載で一見とても怪しい。サルサは船に乗るまで全く知らなかったが、ラテン音楽の一つだ。踊るとなるとかなり腰の動きが重要になる。インドネシアクルーは基本的にサルサがすごく上手で少し教えてもらったのだがなかなか最後まで上手く踊れなかったのが残念である。船でお酒を飲んで踊ってとなると、船の酔いなのかお酒の酔いか分からなくなる。しかしそれを体験しているのは日本ではかなり少人数な方ではないかと思うと、こんなことでも貴重な体験にも思える。

 

踊りといえば毎晩好きに社交ダンスが踊れる場所があった。勿論お客さん専用の場所だが働いている時間外に何回か踊りに行ったことがある。社交ダンスは男性がリードして踊るというイメージがあったが正にそうだった。ステップもそんなによく分からなかったが上手にリードできる人と組むと自分も上手に踊れる。踊れていると楽しいしそこに感動が生まれるし何より男女で肩と腰を置いて見つめあいながら踊るのはロマンチックだ。ダンスを踊る場所にはバーがついていてカウンターで飲みながらダンスが見れる。また専用のジャズバンドスタッフがいるので毎晩生演奏が楽しめる。バンドには綺麗な歌姫がいた。煌びやかな衣装をまとい歌う姿にはうっとりする。私はそこで飲みながら生演奏を聴くのが好きな時間だった。お客さんにウィスキーのつまみにチョコレートを食べるという最高の組み合わせを教えてもらい、またひとつそこで大人になった。

 

毎日海や空を見るわけだが場所や日によっても全く違う景色を見せてくれるので飽きることはない。運がよければイルカの集団が泳いでいるところもみれる。船は常に動いているので風も気持ちがいいし、たまに虹を見ることもできる。水先案内人の方には貴重な話も聞けるし乗っているお客さんとも距離が近いのですぐに仲良くなることができるから地上にいる時よりも開放的になれる。もう一生乗っていたいと思ったが、なかなか絵を描けなかったことが難点の一つだった。

 

続く