india2

船に再び戻った。インドを出港すると次の寄港地まで約二週間は船の中に缶詰めである。その間の船の中の生活を書こうと思う。
船生活は退屈といわれているが船の中の楽しみ方は多いと思う。

クルーだとお客さんも入れない関係者以外立ち入り禁止の場所に行ける。お気に入りの場所は前方デッキ。通常入れない場所で船の本当の先頭の場所である。一度夜に友達のHちゃんといった。

船以外の街頭はないのでいつも満天の星空が見れる。私達は仰向けに寝そべり将来のことについて話し合った。私は絵を描くのが好きなので昔から画家になることを夢だった。

船生活にあたっても画材を少し持ってきていたが船酔いするのでここではそんなに描けていない。高校の時に通っていたアトリエの先生に「良い絵が描きたかったら美大に進むのではなくもっと色んな世界を知った方がいい」といわれ父の仕事である鍼灸師になったのである。

画家も鍼灸師もどちらも道は過酷であると思う。生涯をかけて技術を追求しなければいけないからだ。船に乗っている間もそのことについてずっと考えていた。
このまま鍼灸師を続けるにしても絵を描く時間を犠牲にして良いことなのだろうかと。

応えの代わりに星がキラリと落ちた。

続く